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第19回熊本ペインクリニック懇話会 平成12年11月28日(火)
熊本大学医学部付属病院
1、あなたの周りにもいる特発性低脊髄圧症候群
熊本大学麻酔科 水溜絵津子、田代雅文、志茂田
治
特発性低脊髄圧症候群とは?
正常髄液圧は側臥位で70-180mmH2O、圧がこれ以下の場合を低脊髄圧症候群という。
原因:髄液漏(頭部外傷、手術、腰椎穿刺)、髄液産生低下・吸収元進など。
原因が明らかでないものは特発生低脊髄圧症候群症候群と呼ばれている。
症状:起立性頭痛、外転神経障害(複視)、難聴、耳鳴、時に硬膜下血腫など。
検査所見:低髄液圧、MR1上硬膜のびまん性肥厚、ガドリニウムによる硬膜増強効果
治療:大部分は仰臥位安静+保存的治療で治癒。難治性の場合は持続硬膜外生食注入(15-20ml/hr)、硬膜外自家血注入(10-15ml)などを行う。
症例1(持続硬膜外生食注入と硬膜外自家血パッチ治療で軽快した1例)
51歳、女性、149cm、53kg
病歴:
2000年1月15日、複視と後頭部痛が出現。右外転神経麻庫、起立性頭痛を認めたため精査加療目的で1月18日当院神経内科入院。
主な検査所見:
(頭部・脊髄MRI)びまん性硬膜肥厚、ガドリニウムによる硬膜増強効果
(脊髄MRA)脊椎周囲静脈の異常拡張
(腰椎穿刺)L2/3、3/4、4/5で髄液圧OmmHg〜0
(脳槽シンチグラフィー)明らかな髄液漏出部位なし
経過:
'特発性低脊髄圧症候群と診断後、3週間の安静+保存的治療で症状の改善なく
麻酔科にコンサルトがあり硬膜外持続生食注入を開始。(L2β、10ml!hr、6日間)
注入開始3時間後より頭痛は徐々に軽快、翌日にはNSAIDsは不要になった。
6日間の持続注入で頭痛消失、右外転神経麻庫も軽減したため注入を中止した。
再度施行した頭部MRIで硬膜下血腫を認め、脳槽シンチグラフィーでは腰椎に軽度集積を認めたため硬膜外自家血注入(L3/4、10ml)をおこなった。
その後、血腫は縮小傾向となり頭痛の再発もなく3月9日退院した。
症例2(特発性低脊髄圧症候群が疑われた1例)
59歳、男性
病歴:2000年7月10日から後頭部痛が出現し、近医での頭部CTにて右頭頂部の脳腫瘍(髄膜腫疑い)を指摘された。起立性頭痛、吐気・嘔吐を認め脳腫瘍に伴う頭痛よりも特発性低脊髄圧症候群が疑われた。lo日間ほど安静臥床、NSAIDs等投与で経過観察していたが症状が軽快しないため麻酔科にコンサルトされた。
主な検査所見:
脊髄MR1上Th3-9のレベルで背側硬膜外腔に水分貯留の所見あり
同部位での髄液漏出の可能性が考えられた。
特発性低脊髄圧症候群疑いで麻酔科コンサルトされたが脳腫瘍に対して手術の可能性があること・頭痛が軽減してきていることなどから麻酔科的な治療(硬膜外カテーテル留置)は行わなかった。
まとめ
特発性低脊髄圧症候群は1938年に最初の報告がされている。症状はくも膜穿刺後頭痛に類似しており治療法も同様に仰臥位安静、NSAIDs、輸液などがまずおこなわれる。難治性の場合は硬膜外生食・自家血注入などの麻酔科的な手技が効果的な場合もある。特発性低脊髄圧症候群患者が頭痛を主訴にペインクリニックを訪れる場合もありうるため、頭痛患者の鑑別疾患として特発性低脊髄圧症候群も考慮すべきと考える。
参考文献:
AkiraMatsumura,IzumiAnno,HiroshiKimura,etal:Diagnosisofspontaneousintracranial
hypotensionbyusingmagneticresonancemyelography.JNeurosurg92:873-876,2000
川崎史朗、山本祐司、角南典生、他:持続硬膜外生食注入にて治癒した特発性頭蓋内圧低
下症の1例.脳神経51:711-715、1999
SchievinkWI,MorrealeVM,AtokinsonJLD,etal:Surgicaltreatmentofspontaneousspinal
cerebrospinalfluidleaks.JNeurosurg88:243-246,1998
猪原匡史・柳原千枝、西村洋:硬膜外自家血注入にて完治した特発性低頭蓋内圧症候群
の1.例.臨床神経38:838-842、1998
FukutakeT,SakakibaraR,MoriM,etal:ChronicintractableheadacheinapatientwithMarfan's
syndrome.Headache37:291-295,1997
荒若繁樹、山川達志、白井日出雄:頭部MRIで髄膜造影を認めた頭蓋内圧低下症の1例.
神経内科46:417-420、lgg7
SchicvinkWI,MeyerFB,AtkinsonJLD,etal:SpontaneousspinalcerebrospinalHuidleaksand
intracranialhyp・tensi・n・JNeur・sufg84:598-605,1996
2、胸腔内に顔を出した硬膜外カテーテル?!
熊本地域医療センター麻酔科
尾崎真理、成松紀子、高群博之、田上
正
【症例】67歳男性身長156cm体重67kg。
【既往歴】20年前に交通事故で鎖骨骨折。
【現病歴】検診の胸部X干で、右肺S2領域に異常陰影を指摘され、当センター紹介
受診。経皮的穿刺細胞診でSCCと診断され、手術目的で入院。
【検査所見】心電図所見、血液生化学検査で異常なし。
【麻酔経過】硬膜外麻酔:左側臥位。傍正中法(刺入点:Th6-7疎間の正中線から約1cm
側方)。2〜3回の穿刺の末、生理食塩水を用いた抵抗消失法によって硬膜外腔を確認。(但し体格の割に非常に深く、Tuohy針に極端に角度がついていた)
髄液や血液の逆流がない事を確認し、X線不透過チューブを頭側に向かって、皮膚から12cmチュービング。チュービングは全く抵抗なくスムーズで、患者も背部に違和感、圧迫感などの訴えなし。皮下トンネル作成後、再度髄液や血液の逆流がない事を確認しテスト量として2%キシロカイン3m1注入。5〜6分後知覚、運動麻輝が起こらない事を確認し、全身麻酔へ。
全身麻酔:プロポフォールで急速導入、ペクロニウムで筋弛緩。
ブロンコキャス左用37Frを経口挿管。気管支ファイバースコープでチューブ先端の位置確認執刀と同時に片肺換気とし5分後に、鎮痛目的で硬膜外チューブから、塩モヒ3mgワンショットで注入。ディスポーザブル持続注入ポンプに、1%キシロカイン100m1と、塩モヒ7rを充填し、時間2mlで硬膜外注入開始。開胸して胸腔内操作に移った頃、手術刺激による頻脈血圧上昇に対し硬膜外チューブに2%キシロカイン4m1注入。この
時胸腔内へのキシロカイン注入を認め、胸腔内に硬膜外チューブが迷入している事に気づく。
【反省点】1)胸腔内穿刺に何故なったのか?
*穿刺部位は正しかったか?
*穿刺の方向は極端に角度がついていなかったか?
*横突起までの距離と目的とする部位までの距離の違いは妥当であったか?
*体位はきちんととれていたか?
2)胸腔内穿刺となった時引き起こされる合併症に対する対策は?
持続硬膜外麻酔は,手術のための麻酔、術中や術後の鎮痛、ペインクリニックなど幅広く用いられている。しかし、中にはブロック効果が無効だったり、不十分な場合に遭遇することがある。その原因のひとつとして、カテーテルの硬膜外からの逸脱を考慮しなくてはならない。
硬膜外カテーテルの椎間孔からの逸脱の頻度は4〜16%と報告されており、持続硬膜外ブロックの合併症、失敗例の中で最も発生率が高いものの1つである1)2)。硬膜外腔に挿入されたカテーテルの走行を予測するのは困難なため、全例単純X線による位置確認と硬膜外造影を行い、確実に硬膜外腔にカテーテルが留置されているか確認してから、局所麻酔薬の注入を行っているところもある4)。またチュービングしたカテーテルの屈曲、反転、回転その他が、それぞれ11%、16%、23%見られるとの報告もある3)。今回は、Tuohy針が硬膜外腔に入ることなく椎間を経て右胸腔内に進入したと思われる。胸腔内穿刺で起こりうる合併症として@気胸A血胸B神経損傷などが挙
げられる。今回右開胸下手術であった事から、いち早く胸腔内穿刺に気付き、術後特に問題はなかった。しかし左肺の開胸下手術であったなら、健側右肺の気胸をおこし、術中換気不全に陥っていた可能性がある。術中換気不全の原因として、現場で最初に考えるのは、麻酔器の異常、麻酔回路の異常、気管内チューブの異常、気管支撃縮や喀疾による気管支閉塞等であり、気胸合併の診断に至るのに時間を要し、致命的合併症に至ることも考えられる。実際、胸部持続硬膜外ブロック4日目に胸内苦悶感を突然訴え気胸と診断され、カテーテルの造影にて造影剤の胸腔への拡散が確認されたという症例報告もある
*参考文献
1)。
柳川利正、藤原幹人、林泉、溝口弘美、川村純一郎、小田代政美:硬膜外カテーテルの胸腔内迷入に
より発症した医原性気胸の1症例.ペインクリニック15:430_432,1994
2)伊藤樹史、川端正博、須田高之、興水健治、金子英人、立原弘章:持統硬膜外カテーテルの走行異常.
ペインクリニック10:106-112,1989
3)小林則之:7種類の硬膜外カテーテルの比較検討.麻酔39:335_342,1990
4)伊藤彰師、相見有理、杉浦健之、安田邦光、三浦政直、馬場瑛逸:硬膜外持続注入療法中に硬膜外カ
テーテルが硬膜外腔から血管内に迷入した症例.臨床麻酔22:239_240,1998
3、私が初めて経験する癌性疼痛患者管理
熊本労災病院麻酔科
永田千代子、柳文 冶、上妻精二、後藤真一、工藤祥子
症例:49歳;男性身長162cm体重45kg
既往歴:特になし
現病歴:
H11年5月中部胆管癌の診断で膵十二指腸切除術(Child法再建)施行.
7月その後外来にて経過観察.
H12年2月背部痛出現,腹部CTで傍大動脈リンパ節転移認め,放射線治療施行.
背部痛に対してMSコンチン内服(60mg旧)開始.
5月左背部しびれ,上腹部鈍痛増強
6月MSコンチン90mg旧,ボルタレン坐薬(25mg)頓用.
7月疼痛に加え食欲不振による栄養障害のため入院(8月21日まで).
局所再発の診断.MSコンチン270mg旧
9月上腹部全体のしめつけるような痛み,消化器症状(下痢,便秘),
中枢神経症状(頭がぼ一つとした感じ)出現.
10月6日MSコンチンに加えステロイド(プレドニン5mg旧)開始.
8日イレウス症状にて救急外来受診,入院.ステロイド中止.
17日'深呼吸時呼吸困難感出現.胸部CTにて,右癌性胸膜炎,右肺虚脱,
左S5転移像間欠的に胸水排液開始(800血〜2000血).
腹部CTにて腹水貯留,播種性転移疑い
19日MSコンチン中止,塩モヒ50mg旧持続静注へ,ボルタレン(50)1〜2回旧
20日塩モヒ200mg旧持続静注へ.MSコンチンやめてから体の調子がいいと
30日眠気,ふらつきあり→主治医塩モヒ持続静注中止,ボルタレン坐薬4回/日
-->疼痛強くなり塩モヒ10mgdiv
31日背中〜腰しぼるような痛み,胸腔ドレーン部痛有り
-->塩モヒ170mg旧持続静注へ.
11月2日疼痛コントロール困難なため,麻酔科コンサルト.
検査:胸写右肺胸水貯留,気管,縦隔偏位.
胸腹部CT 右癌性胸膜炎,右肺虚脱,左S5転移巣.
腹水貯留.肝門部局所再発,傍大動脈リンパ節転移,放射線治療後.
血液検査(10!30)WBC5500ノμ1,Hb1幻g/dl,Plt33.6万ノμ1,GOT56U/1,
GPT60U/1,S-Amy56U/1,T-Bi1020mg/dl,BUNn.1mg/dl,
Cr 0.85mg/dl,T-P 4.9g/dI,CEA166ng/m1↑,CA-19-9
204.2U/m1↑
経過:
11月2日手術室にて硬膜外チューブ挿入(Th7/8)
2%キシロカイン3m1注入後「すっきりした,久々にゆっくり寝れそうだ」と喜ぶ.
VAS 54→20mm!
0.25%マーカイン47ml+塩酸モルヒネ 10mg,2ml/hrにて開始
IVH内 塩酸モルヒネ40mgへ減量
11月11日右肩〜右側胸部痛出現.上腹部こわばりが気になると
→ボルタレン坐薬(25}50mg)頓用で効果有り,硬膜外持続注入の内容変更せず.
抗うつ剤(トフラニール(25)1T1×),ステロイド(リンデロン(05)
2T 2×)開始.
11月14日エコー右胸腔器質化した多房性病変.
側臥位にて下側のしびれ訴える.Cold sign消失
Th6〜L2,analgesia Th7〜Th12
11月15日39度台の発熱
11月16日VAS 38mm.
軽度呼吸困難あり.
11月17日VAS 15mm 呼吸困難増強.Sp02 92%.
11月20日疼痛ほとんどないが,呼吸困難強く,酸素投与開始.Sp0287%(NC2L)
11月23日呼吸困難強く,「楽にしてほしい」と(本人,家族).
塩モヒ点滴静注70mg旧,ホリゾン50mg旧点滴静注,
硬膜外持続注入中止.
1 1月24日徐々にレベル低下.
11月26日17:35永眠.
考察:問題点
#疼痛管理
上腹部鈍痛,背部痛:MSコンチン270mg,塩モヒ200mg持続静注でもコントロール
不良であったが,持続硬膜外ブロック開始し,かなり改善.
右肩〜右側胸部痛:NSAIs併用し効果があった.
上腹部全体の締めつけ感,つっぱり感
持続した.鎮痛補助薬として抗うつ薬併用したが,投与量が少なかったためか,あまり
効果がなかった.筋・筋膜性癖痛?
神経ブロック持続硬膜外ブロック
局麻薬で知覚,交感神経ブロック.モルヒネ投与ルート.鎮痛効果増
強.神経破壊薬による神経ブロックを行うための診断的ブロックや緊
急時の痛みに対応する時などで,短期間用いられる.
神経破壊薬を用いた交感神経ブロック
腹腔神経叢ブロック,上下腹神経叢ブロック,
胸部・腰部交感神経節ブロック
神経破壊薬を用いた知覚神経ブロック
くも膜下フェノールブロック
#呼吸困難疼痛よりも,呼吸困難で苦しんでいた.
#QOL 食欲減退今回 食欲増進目的にステロイド使用したが,あまり効果なく,
2日後,39度に熱発し全身状態悪化していった.
睡眠障害 患者がハルシオン内服にやや抵抗有り.ボルタレン坐薬使用し入眠.
満足いく疼痛コントロールではなかったのかもしれない.
離床 持続硬膜外注入開始後,約7日間は,3階の病棟から2階へ降り,
タバコを吸うなどの気分転換ができていた.
#病名告知 この症例では,末期癌であることを本人に告知していなかった(家族の意向).
患者との信頼関係が不十分になるのではないか.
以上,今回初めて癌性疼痛患者管理を担当し,自分なりに試行錯誤しながらやってきた内
容をご紹介させていただきました.先生方のご意見を,今後の参考にしたいと思います.
4、診断一治療に苦慮した頭痛一顔面痛の症例(Part2)
熊本赤十字病院麻酔科 定永道明
〈症例1〉51才。女性。糖尿病性単神経障害
〈症例2〉39才。男性。症候性(?)後頭神経蒲
後頭神経三叉神経症候群.(Great OccipitaI Trigeminal
Syndome:GOTS)
〈症例3〉70才。男性。無疹性ヘルペス'
〈症例4〉61才。男性。三叉神経麻陣?(末梢性三叉神経炎?)
〈症例5〉60才。女性。〃
〈症例6〉32才。男性。
中1のときより、右眼窩奥から頭頂部にかけてズキズキする痛み発作が起こるようになった。1〜2年毎に夏から秋への季節の変わりめ(たまに春から夏へ)に起きる。1日のうちでは寝入りばなが多く痛みで目が覚めることもしばしばであった。痛みは1〜2時間続き、結膜充血、流涙、悪心・嘔吐などの自律神経症状を伴い、その間何もすることができないという。これまで、大学病院、市内の病院の内科、脳外科などで調べてもらったが、頭痛発作が起きていないときは何ともないので、「メニエル病」、「心の病」とくらいしかいわれなかった。最近は次第に頭痛発作の起きない年が多くなってきていたが、H.127/23久しぶりに頭痛が出現したため救急外来に来院してもらった。
(所見)右眼窩周囲、奥に広がる痛み。えぐられるようと表現。眼窩上部、側頭部に圧痛点あり。結膜充血、悪心あり。(図参照)
(経過)側頭部の圧痛点に局注、カフェルゴット、プレドニン10rを投与した。その日は良かったが、また次の日より、頭痛持続。4日後、SGBと圧痛点に局注、カフェルゴット、プレドニンを追加投与した。その後頭痛はほとんど起きなくなった。
(診断)群発頭痛
〈症例7〉77才。男性。
H.129/141〜2週間前より右耳内、耳後部、右下顎部カ嘱むということで当院耳鼻科受診。耳内所見は異
常なし。抗生剤、鎮痛剤の投与を受けるも変わらず。9/21麻酔科紹介された。
(所見)耳の奥がひつくり返されるような痛みがする♂と表現。非発作性の持続痛。夕方頃強くなってくる。
圧痛点あり。
(経過)SGBで痛みやや軽減、圧痛点に局注を行ったところさらに痛み軽減したため、後頭神経三叉神経症候群GOTSを疑う。頚椎のX線(機能写)をとるも有意な所見は得られず。ブ□ツク後は痛みは一時的
に消失または軽減するものの、夕方になるとまた痛くなってくる。ロキソニンも効果なし。3回目のブ
□ツク施行時、右側頭部の咬筋のspasmに気付く。本人は、耳の奥が痛いのだからもう一度耳鼻科で精
査を希望されたが、歯科に紹介した。右顎関節にスペースがあり、不適合義歯による咬合異常が指摘さ
れた。義歯を調節してもらったところ次第に痛みは改善してきた。
(診断)右顎関節症
〈症例8〉46才。女性。未婚。既往に喘息、狭心症、筋腫にて子宮全摘。
約1年前、左顔面痛で皮膚科より紹介され、非定型顔面痛疑いにて5日間入院。SGB3回とトリブタノー
ル、デパス、加味迫遥散で劇的改善した症例。その後2週間毎に肩こり、後頚部痛でフォローしていたが、H.1211/5再び左顔面痛が出現。我慢できず当院救急外来受診。翌日麻酔科入院となる。
(所見)左鼻部、口周囲のジンジンする持続痛。右にも少しまたがる。知覚鈍麻あり。圧痛点はない。発作性はない。左顔面全体が浮腫状、結膜充血、悪心、開口障害(痛みのため?)あり。
(経過)1回目のSGBで顔面痛やや軽減、しかし、代わりに割れるような頭痛が出現したり、気分が優れなかったりした。翌日スマトリブタン(イミグランJ)1A皮下注したところ、数分後から痛みがかなり軽減
した。その後SGB3回行い、左顔面は浮腫状であったが、痛みは次第に軽減、3日目に表情明るくなり、退院できた。
(診断)非定型顔面痛
群発頭痛,片頭痛,三叉神経痛の相違点
群発頭痛 片頭痛 三叉神経痛
家族歴 非常に稀 遺伝的素因,家族環境因子あり なし
性別 男:女=5:1 男:女=1:3 男:女=1:1.5
発症年齢10〜30歳. 30〜40歳 50〜60歳
既往歴 アレルギー 自律神経失調? 動脈硬化?
(疼痛発作)
前駆症状 稀 典型的片頭痛では閃耀暗点
なし
発作時期 1〜2年の周期性に群発 女性では月経周期と関連 季節の変わり目に多い.
痛みの性質 灼熱性 拍動性 電撃性
持続時間 1〜2時間 典型的片頭痛:数時間
数秒
普通型片頭痛:2〜3日間
部位 一側眼窩周囲 一側側頭部 一側三叉神経支配領域
誘因 発作期にはアルコール ストレス,アルコール,チーズ 洗顔,歯みがきなどによる.
経口避妊薬 トリガーポイントの刺激
発症時間 REM睡眠時 不定 昼間
随伴症状 鼻閉,流涙,ホルネル徴候 悪心,嘔吐
肩こり
その他 発作時02に過剰に反応 C02に過敏反応
入浴中は起こりにくい
発作時血漿ヒスタミン増加 発作時血漿セロトニン増加
群発頭痛の発症機序
@血管説外頚動脈の拡張
Aヒスタミン説血中尿中ヒスタミン濃度の上昇
B自律神経系の異常視床下部の機能異常によるサーカディアンリズムの変調
C遺伝的要素
D三叉神経血管説
スマトリブタン(イミグラン注)
頭蓋内外の血管に存在する5-HT1B/1D受容体に選択的に作用し、異常に拡張した血管を収縮させることにより、頭痛を緩解させる。また、三叉神経終末に存在する5-HTlB/1D受容体を刺激することにより・三叉神経終末からのCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)放出を抑制して、血管拡張、血管透過性冗進による神経原性炎症を抑制することにも寄与している。
イミグラン注の片頭痛への効果
単回皮下投与15分後に50%、30分後に67%、60分後に{00%の患者で頭痛が消失または軽度へと
改善した。
イミグラン注の群発頭痛への効果
単回皮下投与後の頭痛消失率は、5分後18%、15分後53%、60分後82%であった。
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