第20回熊本ペインクリニック懇話会 平成13年3月23日(金)

第20回熊本ペインクリニック懇話会 平成13年3月23日(金)
                            熊本大学医学部付属病院
1. 神経ブロックに関する同意書の紹介
          熊大附属病院麻酔科 
          ○田口裕之、水溜絵津子,田代雅文,志茂田 治、寺崎秀則

  硬膜外ブロック(頚部・胸部・腰部)の説明・同意書

  星状神経節ブロックの説明・同意書

  
ドラッグチャレンジテストの説明・同意書

  
ケタミン経口投与に関する説明と同意書

  上顎神経ブロック(局所麻酔薬)の同意書

  上顎神経ブロック(永久ブロック)の同意書

  下顎神経ブロック(局所麻酔薬)の同意書

  下顎神経ブロック(永久ブロック)の同意書

  腰部交感神経節ブロックの説明・同意書

(熊大麻酔科 寺崎秀則 教授 のご好意で「あくまでも今回、熊大麻酔科外来にて同意書の作成案を試みたもの」として掲載の許可を得ました。:管理人)




 

2、病的骨折、意識障害を生じた末期癌患者の疼痛コントロール
           熊本地域医療センター麻酔科
           ○尾崎真理、成松紀子,高群博之,田上 正

【症例】76 歳男性
【病名】肺癌、多発性骨転移
【現病歴】
 H12.6 月初め頃から右背部痛、右腰痛出現。近医受診し胸部X-P にて異常陰影を指摘され7/18当院内科紹介入院となった。肺癌、多発性骨転移の診断にて化学療法、放射線療法を受け9/14退院となった。
 同年11 月はじめ頃から呼吸困難出現、11/8、胸部X-P では放射線肺臓炎を認め、低酸素血症のため11/8加療目的で再入院となった。入院後、ステロイドパルス療法施行中の11/25に、暗褐色の下血があり、CF にてS状結腸にBorr 2型癌を指摘された。
 12/7、S状結腸切除術施行し、術後の経過は良好で肺臓炎も安定したが、右腰から大腿部にかけての痛みが激痛となった。痛みは右のL1-2 領域で、安静臥位ではVAS2くらいであったが、立位で7〜8まで増強するため、疼痛コントロール目的に12/27、麻酔科コンサルトとなった。
【麻酔科コンサルト前のモルヒネ使用状況】スライド参照
 患者の痛みの訴え:胸壁と腸骨骨転移に伴う痛みで、右腰部から大腿部にかけての体動時の痛み。
         コンサルト時のMSコンチン内服:270mg。
【麻酔科コンサルト後の経過】スライド参照
*右L1-2領域に限局した痛みに対し、硬膜外チュービングを施行し、輸液ポンプにて1%キシロカイン、時間  2ml の持続注入を    開始。疼痛増強時には、フラッシュ対応。
*コンサルト前の塩モヒレスキュー内服量を、10mg→50mgへアップ
*右大腿骨骨幹部骨折:持続硬膜外注入のベースを増量し、骨折の痛みに対し対処。牽引を開始し、さらに創 外固定術施行後、寝たきりとなった事で体動時の痛みは激減。
固定術の前後からの経過⇒意味不明な発語、見当識障害、ミオクローヌス様の体のピクツキ、不穏が出 現。内服不可能となった時点で塩モヒ静注による疼痛コントロールへ切り替え。MSコンチンの最終内 服量、意識状態、痛み発現状況から塩モヒ量を判断し、生食100mlにいれて時間4mlで開始。
 意識障害は日ごとに進行し、それにつれて痛みの訴えもなくなり、体交時に顔をしかめる程度のみとなったため、徐々に塩モヒを減量し最終的にoffとした。
【意識障害出現の原因】
1.塩酸モルヒネの過量投与、体内蓄積
2.電解質異常
3.長期間ベッド上安静による活動性の低下
【電解質データ】スライド参照
【今回の病的骨折の原因】
1.骨転移
2.肺扁平上皮癌によるPTH-rP(副甲状腺ホルモン関連蛋白)産生による偽性上皮小体機能亢進
3.老人性骨粗鬆症
【末期癌患者に見られる高カルシウム血症】スライド参照
【モルヒネ使用量増減の実際】スライド参照
【最後に】
*病的骨折を生じた末期癌患者の疼痛コントロールを経験した。
*病的骨折に対する基本的治療は骨折部の固定であり、それによりモルヒネ必要量を減量する事ができた。
*病的骨折を生じた患者の意識障害が生じた場合、使用モルヒネ量、電解質異常、腎機能障害等の有無について、確認すべきである。



3、特発性末梢性顔面麻痺におけるMRIの継時的変化
           熊大附属病院麻酔科 ○原 三郎
           天草地域医医療センター麻酔科 松尾孝一、佐藤秀史、浦島ゆかり








4、治療に難渋している術後遷延性疼痛症
                       水俣市立総合医療センター麻酔科
                       ○采田千穂、生田義浩

【症例】38歳、男性。

【主訴】左鼠径部痛。

【現病歴】平成11年10月7日、左鼠径ヘルニア根治術施行(手術時間は1.5時間)される。術後、創部(陰嚢)の腫大と微熱が持続し、11月4日当院外科および泌尿器科を受診した。
 MRI上では創部に一致した炎症性変化があり、左睾丸の腫脹も出現したため11月20日、左高位除睾術施行される。術直後より創部やや下方の疼痛が出現した。鎮痛薬内服にてfollowされていたが疼痛軽減せず、平成12年9月12日に外科より当科紹介受診となる。

【疼痛の性状】持続性の鈍痛。1日に5-6回絞扼性の痛みが出現。入浴しても変化はなかった。長時間の座位で痛み増強する。創部所見として、左鼠径部に約6cm の水平な皮切痕が平行に2本。皮下に硬結を触れ、その硬結部に一致して圧痛を認める。


【治療経過】当科では、1ヶ月間のトリガーポイントブロック後、腰部硬膜外ブロック、10%リドカインゲル塗布、半導体レーザー照射などを施行したが,一時的な疼痛の軽減のみしかみられなかった。ドラッグチャレンジテストの結果、ケタミンはVAS2.3/10まで低下、フェントラミンは9/10で不変、リドカイはVAS6.5/10まで低下した。現在、内服薬としてメジコン散90mg/日、三環系抗うつ薬25mg/日を処方し、外来でケタミン15mgの点滴静注(2回/週)とリドカイン100mgの点滴静注(1回/週)を行っている。VASは通院以前に比べても6-8までしか低下していない。
今後の治療方針について御教示をお願いしたい。